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kamonasubiのブログ

我が履歴書

旅1

「顔を洗ってきなさいよ」

バスで知り合った青年は言う

 

「おれっちは2年前に仕事を辞めたんだ、もう働くのはこりごりさ」

 

『生活はどうしてるの?』

 

「寝泊りは車さ、車がありゃどこでも寝泊りができる、それにお金が寂しくなってきたら各地の農園で住み込みのアルバイトをするんだ、1カ月丸まる働いてお金を貯めたら、また違う土地に行くんだ」

 

『なんだかすごい生活ですね』

 

「大事なことはその土地の人が教えてくれるんだい、あと重要なことが知りたかったらPAでたむろしているライダー達に聞けばいい、彼らの情報力はすごいぜ、何せ日本中をずっと旅してるんだからね」

 

『そういえば昔、ジャンパーソンってヒーローものがありましたね、車からヘリコプターが出動するやつです。小学2年生の頃よく見ていました』

 

「おいおい、話をそらすんじゃないよ。おれっちは今貴重な話をあんたにしてるんだぜ、まあ、あんたがこの先、金が底をつきて実家のお母ちゃんや親戚達にしがみつく羽目になってもいいなら話しは別だがな。とにかくだ、旅には金がいるんだよ。無駄金は一切使うな、一日で使っていいぜいたく品はタバコだけだ。おい、それにしても腹減らないか?安くてうめえ寿司屋がそこにあんだよ」

 

『喜んで』

 

 

 

交差点の角に、一軒の小さな小屋が建っており雑な字で「豊寿司」と書かれた看板が掲げてあった。確かに情報がないと、その存在に気づかなかったろう。

 

「おう、おやっさん、いつもの2つ頼むわ、あとアサリの味噌汁も2つ付けてやってくれ、今日は大事なダチ公を連れてきたんだ」

 

「ヘイ」大将らしき人物が無愛想に答える。

 

「おう、鴨っちよ、ここは一見うす汚い店だがな、安くてうまいんだぜ、おれっちの一番のおススメは”はまち”だ、強い波の海で鍛えられたはまちは、そこらのはまちとはてんで違うんだぜ」

 

『ヘイ』

 

「あんたも変わった人間だな、ところであんたはどこに行こうとしてるんだい?」

 

『昔の仕事仲間が香川で働いているんです、彼に会いに行こうかと』

 

寿司が到着。

 

「しんきくさい話はおいといて、ほら、鴨っち、はまち様のご到着だ、さっさと食ってしまおうぜ」

 

彼はキチンと背筋をのばし「いただきます」と低い声で言ってからはまちを手でほおばり、荒く咀嚼した。

 

「むしゃくしゃ、むしゃくしゃ」

 

『○○さん、むしゃくしゃしてるんですか?ストレスが溜っているのかも』

 

「擬音まで拾わなくていいんだよ、ほら、さっさと食べなよ、味噌汁が冷めちまうぜ」

 

『おいしいです』

「うんうん」

 

 

ふう、うまかったー

 

 

「鴨っちよ、これからどうする?」

『まずはこのへんを探索したいです』

 

「まあいいや、これも何かの縁だ、しばらくあんたに付き合うとするよ。ここから、しばらく移動したらおれっちの車があるんだ。それでどこんでも連れてってやるよ」

 

『ありがとうございます』